医療廃棄物完全無害化処理

医療系廃棄物(感染性、非感染性)処理、処分及び異常プリオンの不活化についての提案書

Proposal for Medical Disposal and Inactivation of Abnormal Prion

病院・診療所・クリニックなどから排出される医療系廃棄物の処理・処分は、通常の一般廃棄物などと異なり、特別な取り扱いが必要であり、経費的にも多大な支出を伴います。この提案書は、そのような医療系廃棄物処理を安全かつ完璧に行い、処理完了品を一般廃棄物として処理できるようにする装置について提案させて頂きます。
なお、今回の提案には、廃棄物に関する収集運搬などについては含めておりません。

1.提案の骨子 -Summary of proposal-

医療系廃棄物(以後 処理物と言います)及び異常変成プリオンを、亜臨界装置を用いて加水分解処理をすることにより完全無害化処理を完結させる装置および方法を提案致します。

法的根拠 Legal restrictions

日本国・環境省大臣官房 廃棄物リサイクル対策部発表(平成21 年5 月)により、「廃棄物処理法」に基づく感染性廃棄物処理マニュアル感染性廃棄物処理基準に「高温高圧蒸気滅菌処理」の方法が追加発表されました。
本装置は、その基準に沿った安全な方法であり、完全処理を実現致します。

2.処理方法フロー -Procedure of treatment-

STEP

1

医療系廃棄物として、専用の密閉容器に入れられて回収された処理該当廃棄物を、密閉式でなおかつ滅菌装置付の破砕機により、容器と共に処理物を破砕し、加水分解処理装置クニスターAZ 型に直接投入します。
此の一連の装置は、上記構造を有する破砕機と加水分解処理装置が一体化された装置で有ります。装置の一回あたりの処理物収容容積は、AZ-0.5 型の場合0.5 ㎥、AZ-1 型の場合1.2 ㎥<です。
処理物を処理装置クニスターAZ に収容後、当該装置を完全密閉状態にします。

STEP

2

装置内部の空気を真空ポンプにより吸引排除し、処理容器内を0.008MPa 程度の真空状態とします。
この時の排出空気は、バーナー燃焼式滅菌装置により完全滅菌の後、大気中に放出します。

STEP

3

上記の状態の装置内へ高圧ボイラーより、高温高圧の飽和蒸気を注入します。一定時間経過後装置内温度180℃以上、圧力1.7MPa 以上と成ります。
前記②のように装置内を真空状態にする事により、処理物に対して偏ることなく高温飽和蒸気が細部にまで充分に行き渡り、最速で温度・圧力が上昇し、目的が達成されることに成ります。

STEP

4

この状態を30 分維持します。それによりWHO の示す高温飽和蒸気を用いた消毒法121℃、20 分以上の条件を完全にクリアーし、滅菌は完全に行われ如何なる生命体も死滅し、完全に不活化状態となります。もちろん、ウイルスをはじめ耐熱性のある細菌芽胞までも完全に死滅します。鳥インフルエンザ等のウイルス対策にも絶対の効果が有ります。

STEP

5

その後、処理完了物を装置より排出させます。尚、これら一連の全工程は、約70 分前後で完了致します。

医療廃棄物処理装置 図面(クリックで拡大します)

以上の一連の工程により医療系廃棄物全般の処理は完全な形で完了します。この処理により、各種病原菌やウイルス対策が重要な課題である医療廃棄物全般に対して絶対の滅菌処理効果が得られます。
また、狂牛病の原因である変成プリオンについてのEU による無害化基準は、140℃・0.36Mpa 処理とされていますが、その基準と比較しても、この装置ではWHO 基準を遥かに上回る条件での処理となっております。ゆえに、BSE 汚染物対策にも充分に利用可能であり、プリオンの完全不活化を図れる装置でもあります。

ここに提案致します「加水分解方式」による処理では、各種ウイルスや細菌などの全ての生命体の完全滅菌を達成すると共に、有機物の小分子化を計るという別の大きな効果を充分に期待することが出来ます。

小分子化とはどういう事かと申しますと、全ての動植物は天然高分子化合物という化合物で構成されております。それに対して、プラスティックと呼ばれている物は合成高分子化合物といいます。これ等の合成高分子化合物はそれなりの形状を有しており、例えば点滴パックやチューブというような様々な形状をしています。
この合成高分子化合物の分子結合は高温、高圧の条件下に於いて加水分解作用により、その分子結合が切り離されます。その結果、ポリマーといわれている合成高分子化合物であるプラスティク類は、エンド型分解をされ、水と少量のガスなどに分解されて消滅します。

他方、動植物を構成している天然高分子化合物のうち蛋白質は、側鎖の違う20 種類程のアミノ酸分子の結合体です。この蛋白質は加水分解作用により20 種類程のアミノ酸の結合体がそれぞれのアミノ酸分子に分解され、蛋白質としての構成が分解されます。その原理で蛋白質の突然変異である変成プリオンも蛋白質その物が分解されて個々のアミノ酸の状態まで分解される事により蛋白質で無くなります。結果として無毒化されるのです。変成プリオンは細菌やウイルスのように自己増殖をする核酸を持たない糖タンパクです。よって消毒や通常の熱処理では不活性化する事が出来ないのですが、この加水分解処理方式であれば完全に不活性化出来ます。
他の物質であるデンプン質はグルコース(単糖)に、また脂肪は脂肪酸その他グリセリン等に分解されます。その様にそれぞれの高分子化合物が分解されて構成要素である分子単体に戻るということです。もちろんこの様にして小分子化された物質はいろんな方面での有効利用が可能と成ります。

3.処理済み品の利用(処分)に付いて -Usage (disposal) of treated materials-

前記により小分子化された処理物は、金属、土石類などの無機物を分別の後、良質な肥料として、または、バイオマス燃料としての利用が充分に可能であります。
別の利用としては、加水分解処理物を高度分離精製処理することにより有効物質を抽出する事も可能であります。
病院・診療所などの医療機関から排出される廃棄物を、加水分解処理装置クニスターAZ型を活用し、各排出元で自家処理を行うことにより、収集運搬、その他処理に関する種々の問題を最小限に抑える事が出来ることになります。まさに、本当の意味での“適正処理”といえるのではないかと考えます。
処理品の利活用にはいろんな方法が有りますが手近な方法の一つとして、具体的には化石燃料との混焼利用が最も有効であると思います。
混焼利用することにより化石燃料の使用を減らす事が出来、CO2 の削減にも寄与できることであると考えます。
以上の理由により廃棄物を、排出事業所(医療関係施設)様単位で確実に、安全に処理の出来る方法としての「加水分解処理装置」のご活用を、是非共御一考頂けますよう提案させて頂きます。

プリオンとは? -Reference: What is prion?-

ここで述べた「プリオン」というタンパクは正常な体内に存在している物質です。プリオンは特に神経細胞に多く含まれており、神経細胞の構造を保ったり神経から神経へ情報を伝達したりするはたらきに携わっていると考えられています。
このプリオンタンパクが何らかの拍子に異常な形になったものがBSE の病原体となります。
正常の生体内で異常な形のプリオンができても、普通は細胞内の酵素によって分解されてしまいます。
しかし、何らかの原因で異常なプリオンタンパクが体外から入り込むと、生体内の正常なプリオンタンパクと結びついて、どんどん正常なタンパクを異常化していきます。
この結果、ネズミ算式に異常タンパクが増え、神経細胞が病気になってしまうのです。このほかにも正常プリオンタンパクを作りだすための遺伝子が突然変異を起こすこともプリオン病の原因の一つと考えられています。正常プリオンが異常プリオンに置き変わると、もともとのはたらきをしなくなるだけでなく、神経細胞にさまざまな障害をもたらします。代表的な病気としては、ヤコブ病であり感染性海綿状脳症と呼ばれ、叉一般的には狂牛病と呼ばれています。
医療廃棄物には直接関係がありませんが「分解」と言う観点から付記いたしました。

おわりに

本提案書作成につきましては、元近畿大学 教授 現大阪市立大学客員教授 工学博士
米虫 節夫 先生のご知見を賜り、ご指導のもと作成致しました。有難う御座いました。合掌

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